菊薫る秋

9月9日は菊の節句です。

桃の節句(3月3日)、端午の節句(5月5日)、七夕(7月7日)と比べるとあまり話題にはなりませんが、古くから伝わる季節の節目です。

とはいえ、今の9月はまだまだ暑く、菊の開花はもう少し先ですね。

菊の節句とは

菊の節句の別名は重陽(ちょうよう)の節句です。

中国の陰陽思想に起源を持ち、陽数(奇数)のうちもっとも大きな数字、9が重なる日に祝い事を行うようになったと言われています。

旧暦の9月は現在の10月頃ですから、まさに菊の季節。

昔の人たちも菊の花の美しさを愛でたのでしょう。

古くから菊の花を入れたお酒を飲んだり、同じく旬の栗を炊き込んだ栗ご飯を食べたりする習慣があったということです。

種類豊富な菊の花

菊と聞いてまず思い浮かぶのは、仏花かもしれません。

黄色や白や紫の菊の花はおなじみですね。

もともとは秋に咲く花ですが、栽培技術が進んだことで、お供えに使われる菊の花は一年中出回るようになりました。

NHKの朝ドラ「らんまん」には先日、牧野富太郎博士(ドラマでは槙野万太郎)が名付けたノジギク(野路菊)が登場しました。

瀬戸内地方にもノジギクは自生しています。素朴な野菊の仲間が、日本の山野にはたくさん咲いていますね。

実は、栽培種の菊に日本原産のものはなく、古い時代に日本に入ってきた帰化植物だということです。

とはいえ、今や菊はすっかり日本になじんで、和の花の代表格となっています。

こうした日本的な菊だけでなく、最近では「マム」と呼ばれる洋菊も人気です。

この名前は、菊の学名である「Chrysanthemum(クリサンセマム)」から略されたものです。

おしゃれな花屋さんにもたくさん並んでいます。

まん丸で可愛らしいピンポンマムは、モダンなアレンジメントなどによく使われていますし、一見すると菊には見えないような花もあります。

バリエーションの豊かさも菊の魅力の一つです。

また、菊は切り花にしたときに花保ちが良いことも知られています。

仏様に供えるにしても、室内に飾るにしても、長期間あざやかに咲いていてくれる菊は重宝なのです。

ワールドワイドなキク科

菊はキク科の植物ですが、同じキク科に属する植物は世界中に2万種以上も存在します。

このキク科には他にもタンポポ、アザミ、コスモス、ヒマワリなど身近な花が多く含まれています。

キク科植物は、野菜としても利用されています。

鍋物に欠かせない春菊(シュンギク)はその名のとおりキク科。

秋ではなく春に、黄色い花を咲かせます。

意外なものでは、レタスやフキ、ゴボウもキク科に分類されています。

生育地域が広く、さまざまな形で進化しているので、一見すると菊の仲間とはわからないような植物も少なくありません。

ものすごく繁栄している植物群なのですね。

品種改良の歴史

菊の花の種類が多いのは、長年にわたって人の手によって改良が繰り返されてきたからです。

挿し芽で殖やせる菊は、突然変異による色変わりなどを固定しやすいという特徴があり、豊富な品種を生み出すことにつながっていきました。

日本で菊の栽培が始まったのは平安時代と言われますが、江戸時代になると品種改良が盛んに行われ、菊の品評会なども開かれるようになりました。

同じ品種の菊でも、育て方によって花の姿が変わるなど、なかなか奥の深い世界です。

福山市と菊

菊の栽培は、福山市とも深いつながりがあります。

2003年に芦品郡新市町が福山市と合併しました。

この新町地区では、大正期から菊の種苗栽培が盛んに行われてきたのです。

新市町の町花だった菊は、合併にともなって福山市の市の花として制定されました。

以来、菊はばらと並んで福山市を代表する花となっています。

福山市と新市町との合併20周年を記念して、福山市しんいち歴史民俗博物館では、2023年9月30日から11月26日まで「新市町の菊の花」が開催されます。

町の歩みと菊の花にまつわる展示を無料で観ることができます。

菊が主役のイベントといえば、なんといっても福山菊花展覧会でしょう。

毎年10月から11月にかけて、福山城で盛大に催されます。

20センチを超えるような大輪や懸崖づくり、びっしりと咲き誇る小菊など、珍しい菊をたくさん観られるチャンスです。

また、小中学生が育てた菊の花も出品されます。

参考:広報ふくやま2023年9月号 暮らしの情報

https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/koho-detail02/koho-202309/302120.html

福山菊花展覧会

https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/miryoku2023/287819.html

涼しくなる頃には、秋ばらも見頃を迎えます。

菊の節句の頃はまだまだ残暑も厳しいですが、本格的な花のシーズンを楽しみに待ちましょう。

菊にばら、秋も花いっぱいの福山市です。