春のサクラとともに、日本の四季の美しさを代表するのが紅葉です。
秋になって木々の葉っぱの色が変わり、
それを眺めて楽しむことは欧米でもあるようですが、
英語には紅葉(こうよう)にあたる単語はなく、
Autumn leaves(直訳すると秋の葉っぱ)などと表現されています。
言葉を見ても、日本人がいかに紅葉に親しんでいるかがわかりますね。
いにしえの紅葉は黄色かった?
日本で紅葉が好まれてきた歴史は古く、
日本でもっとも古い歌集である万葉集にも紅葉を詠んだ歌が数多くあります。
奈良時代には木々が紅葉することを「もみつ」、
赤や黄色に変わった葉を「もみち」と呼んだようです。
「もみち」はやがて「もみじ」になり、
紅葉という漢字が当てられるようになったと考えられています。
おもしろいことに、万葉集では紅葉よりも「黄葉」と書かれていることの方が多いそうです。
大昔からモミジは赤く色づいていたはずで、
奈良時代であっても秋に黄色い葉っぱばかりが目立っていたとは思われません。
文字にしたときに紅より黄が多くなった理由としては、
黄色い葉が好まれたから、中国文学の影響があったから、など諸説あります。
広島県とモミジ
「紅葉」という漢字のもう一つの読み方が「もみじ」です。
モミジは紅葉する木の代表とも言えます。
広島県内にはモミジの名所がたくさんあります。
モミジは広島県の木として制定されていて、とてもなじみ深い木でもあります。
10月中旬から11月にかけて、あちこちでモミジが見頃を迎えます。
有名なのは国定公園帝釈峡、三段峡、宮島などですが、
近所の公園の木々や庭木なども美しい色に変化していくので、ぜひ目を楽しませましょう。
山の方は気温が下がるのが早く、紅葉も早い時期から始まります。
近年は温暖化の影響か紅葉の期間が短くなっている地域もあるようです。
見頃を逃さないようにしたいですね。
全国の紅葉情報を発信しているサイトなどもありますので、参考にすると便利です。
●広島県 県のプロフィール
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/19/1168842433111.html
●広島県の紅葉見頃情報 2022
花より団子、紅葉より○○?
県外の方にとっては、広島のモミジと聞くと木そのものよりも「もみじ饅頭」のほうが思い浮かぶかもしれませんね。
もみじ饅頭は、モミジの名所・宮島で生まれたおいしいお菓子です。
広島のお土産としてもっとも有名で人気があるもののひとつだと思います。
モミジの葉をかたどった焼き饅頭で、こしあんが入っているのが定番ですが、最近では中身のバリエーションが増えて、チーズクリームやチョコレート味、フルーツ入りなどもあります。
皮のほうも、「揚げもみじ」「生もみじ」などユニークなものがいろいろ誕生していますので、機会がありましたらぜひ食べ比べてみてください。
紅葉がいっぱい
ちょっと気をつけて見回してみると、紅葉する木はモミジ以外にもたくさんあります。
春の主役ソメイヨシノも、秋になると葉っぱが黄色から深紅へと変わっていきます。
色づいた葉から落ちていくので、この時期に桜並木を通るときには上よりも足元を見てみるとさまざまな色を楽しめます。
黄色くなるイチョウは、誰でも知っている身近な木ですね。
まさに黄葉なので、万葉の人々も好んだでしょうか。
イチョウの木のそばでも足元を見た方がいいかもしれませんね。
実が落ちていたら、踏まない方が賢明です。
加工すると銀杏としておいしくいただけるイチョウの実ですが、生のものはなかなか強力な臭いがしますから。
柿の木もまた、葉の色が美しく変わります。
もともとの緑から黄色や赤、茶色とさまざまな色合いに変化していく様子から
「柿紅葉」という晩秋の季語にもなっています。
庭や公園の植木として人気のハナミズキ、ニシキギ、ドウダンツツジなども赤くなります。
これらは、名前を知らなくても見たことはある、という人が多い木々です。
山に入ればウルシやハゼノキ、ハナミズキの近縁種のヤマボウシなどが赤くなり、
ムクロジやマンサクなどが黄色く輝き、秋の美しさを堪能することができるでしょう。
きれいだなぁ、と思う紅葉を見つけたら、今はスマホのアプリで簡単に植物名を調べることもできます。
公園や野山で紅葉を味わいながら、大人の自由研究も楽しいですよ。