梅、桃、桜と、春の花は心を浮き立たせてくれるものです。
しかし一方で、残念ながら歓迎されない花もあります。
思い当たる方は今、お薬やティッシュが手放せないのではないでしょうか。
そう、温かくなってくるとスギやヒノキなどの雄花から花粉が飛びはじめるのです。
花粉症の方にとっては悩ましい季節ですね。
花粉症が増えたのはなぜ?
ご高齢の方が「昔は花粉症なんてなかったのに…」とおっしゃることがあります。
日本で初めて花粉症が報告されたのは1960年代のこと。
1961年にブタクサ花粉症が学会で報告され、次いで1963年にスギ花粉によるアレルギーが発見されました。
スギ花粉症の調査は、杉並木で有名な栃木県日光周辺で春に鼻炎を発症する人が多かったことから始まったのだそうです。
つまり、花粉症自体は昔からあったものの、昭和の時代には発症者が限られていたので、あまり話題にならなかったのでしょう。
スギの産地以外でも花粉症の患者が増えてきたのは、90年代以降です。
スギが花粉を多く出すようになるのは樹齢25年から30年と言われ、第二次大戦後にたくさん植林された杉の木が成熟してきた時期と重なります。
また、飛散する花粉が増えてきたことに加え、食生活の変化や腸内細菌の変化、大気汚染なども花粉症の増加に影響していると考えられています。
アレルギーとは、異物から身体を守ろうとする免疫反応が過剰に働いている状態です。
花粉が身体に入ったからといってすぐに花粉症を発症するわけではなく、その花粉に対する抗体が作られます。
花粉を取り込み続けると抗体の量が増えていき、一定以上に増えたところでアレルギー症状が出てきます。
「去年まで大丈夫だったのに…」という人は、急に発症したようにみえますが、実は数年から数十年かけて抗体が蓄積されていたということになります。
飛散するスギ花粉の量が膨大になったため、この蓄積の期間が短くなり、発症者が増えたとも言えます。
いまや人口の30~40%が花粉症を発症していると推測され、すっかり国民病のようになってしまいました。
大人だけでなく、小さな子どもの発症もめずらしくありません。
古くて新しい病気
世界に目を広げると、花粉によるアレルギーは昔からありました。
ヨーロッパで枯草熱(こそうねつ)と呼ばれる病気の原因がイネ科植物の花粉だと突き止められたのは19世紀の後半です。
日本での花粉症研究の歴史はまだ50年あまりで、病気としては比較的新しいものです。
しかし、植物の花粉は大昔から存在しているのですから、もしかしたら古代人も特定の季節にくしゃみを連発して「なんだろう?」と不思議に思っていたかもしれません。
花粉症を引き起こす植物は500以上あるとも言われており、もっとも発症者が多いのがスギとヒノキ。
その他には、イネ科のカモガヤ、キク科のブタクサ、ヨモギ、木ではシラカバやケヤキなども症例が報告されています。
北海道北部にはスギが植林されていないためスギ花粉症の人は少ないのですが、シラカバの花粉症は多いそうです。
アレルゲン(アレルギーの原因物質)の検査を受けると、自分が何の花粉に反応しているかを調べることができます。
少しでも快適に過ごせますように
花粉症は命にかかわる病気ではありませんが、なにしろ不快ですし、集中力が落ちるなどの弊害もあります。
しかし今のところ、花粉症を根本的に治す方法はなく、対症療法しかありません。
早めに耳鼻科や眼科、アレルギー科などを受診し、薬を処方してもらうのが現状での最善策と言えそうです。
最近では眠気が少ない薬などもありますので、医師に相談して、自分にあったお薬を見つけたいですね。
花粉を吸い込まないためにマスクをする、メガネをかける、洗濯物を外に干さないなどの対策も有効です。
スギは建築用などに有用な樹木ですし、環境保全のためにも山林をなくしてしまうわけにはいきません。
しかし、すでに花粉の少ないスギや無花粉のスギが開発されており、少しずつ植え替えられているということです。
木が育つには何十年もかかりますので山林の世代交代はゆっくりではありますが、将来にはスギ花粉症に悩む人が少なくなるといいですね。
また、今後さらに研究が進めば、画期的な治療法が生み出されるかもしれません。
明るい未来に期待したいところです。
花粉症の皆様、どうぞお大事に。
花粉の季節が過ぎるまで、もう少しです!
参考:環境庁 花粉情報サイト