今年は猛暑で、9月後半となっても30度を超える真夏日が続いています。
10月1日は衣替えですが、まだまだ半袖が活躍しそうな気候です。
衣替えの習慣は、古くから私たちの生活に根付いてきました。
もともとは中国の風習で、それを取り入れた平安時代の宮中行事が日本での衣替えの起源とも言われています。
太陽暦が採用された明治時代以降は、衣替えは一般的に6月1日と10月1日に行われることが多く、10月になるといよいよ秋という感じがしたものです。
しかし、最近の気温を考えると、10月1日になったからといってあたたかい服に着替えるというのはちょっと抵抗がありますね。
気候で変わる衣替え
日本は豊かな四季に恵まれていますが、同じ国内でも北と南では気候がかなり異なります。
そのため、衣替えも北海道では冬服の期間が長く、沖縄などでは夏服の期間が長くなるように設定されてきました。
しかし、世界的な地球温暖化の進行により、どこの地域でも夏の期間が長くなりました。
いまや、本州でも沖縄に負けないくらい暑くなっていますから、衣替えにも影響は出ています。
昔のように夏服が6月1日から9月30日までと決めてしまったら、熱中症にかかる人が増えてしまいそうです。
衣服の変化
衣服自体の変化も衣替えの必要性に影響を与えています。
和装が中心だった時代には、季節ごとに着物を替えることは大仕事でした。
着物をクリーニングするには、一度ほどいて反物の状態に縫い合わせてから水洗いし、細い竹製の器具を使った伸子張り(しんしばり)でしわを伸ばし、糊付けし…と、大変な工程が必要です。
この洗い張りというお手入れは、現代では専門業者にお願いするところですが、昭和初期までは家庭でも行われていたそうです。
また、庶民の場合は持っている着物の数が少ないため、夏に着ていた着物に裏地を付けたり中綿を入れたりして秋冬物に仕立て直すこともありました。
こんなに手間がかかるとなると、衣替えの日を決めてまとめて仕事をする方が効率的だったことでしょう。
現代では、衣類の価格が下がり、機能性の高い素材も増えているので、大がかりな衣替えをしなくても済むようになりました。
サラリーマンのスーツでさえ、素材やスタイルは多様になっています。
ある程度の季節感は必要とは言え、自由な時代になりました。
会社によってはクールビズ期間が定められている場合がありますが、ここ数年はコロナ禍で在宅勤務が広がり、ますます衣替えの印象は薄れている気がします。
学校の衣替えも柔軟に
いま衣替えがもっとも身近なのは、制服を着ている中高生たちかもしれません。
しかし、学校制服においても衣替えの変化がみられます。
かつて中学校や高校では、6月1日と10月1日にきっちりと制服の衣替えが行われることが多かったものですが、最近ではだいぶ柔軟になってきています。
移行期間が長く取られたり、合服·中間服が導入されたり、一斉に衣替えを行わない学校も増えました。
公立の中学校では指定スポーツウェアでの通学を認めているところもあります。
暑さや寒さの感じ方は人それぞれですから、生徒たちが自分で判断して衣類を選べるのは良いことだと思います。
ジャケットの他にベストやカーディガンで調節できる組み合わせ型の制服は人気がありますが、機能面を考えても優れているのですね。
衣替えとクリーニング
このように、現代の衣替えは10月1日と6月1日にこだわらなくなってきました。
ただ、季節はいずれ変わりますので、衣類の切り替えは進んでいきます。
ゆるやかな衣替えで気をつけたいのは、着なくなった季節の衣類のお手入れです。
特に夏物は、どうしても汗が残りやすいもの。
一見きれいに見えても、保管前には丁寧な洗濯や汗抜きクリーニングを行うとよいでしょう。
見えない汚れが残ったまま収納してしまうと、衣類は黄ばんだり傷んだりするからです。
次のシーズンにも良い状態で着用できるように、衣替え=クリーニングのタイミングと考えるとよいかもしれません。
昔の洗い張りに比べれば現代のお洗濯はぐっと簡単になっていますが、衣類によって適した洗い方はさまざまです。
日本の衣類の洗濯表示は国際規格に合わせて2016年12月に変更されました。
見慣れないマークも加わっていますので、衣替えのタイミングであらためて確認してみてはいかがでしょうか。
政府広報の解説をご紹介します。
政府広報オンライン「衣替えの季節です。あなたは正しく洗濯していますか?」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201812/2.html
衣替えは、気候の変化とファッションの進化に合わせて時期や方法が変わってきましたが、衣類を適切に管理し、快適に過ごすという目的は変わりません。
季節の移り変わりを感じながら大切な衣類と向き合う機会として、衣替えの習慣はこれからも続いていくことでしょう。