2021年7月、東京2020オリンピック競技大会が開幕しました。
本来なら輝かしくも晴れやかなイベントのはずですが、残念なことに新型コロナウイルスの第4波、変異株も広がる中での開催となってしまいました。
直前の世論調査でさえ開催反対の声が半数を超えるという異例の状況です。
まさか、こんなに複雑な思いで二度目の東京オリンピックを迎えることになるとは思いもしませんでしたね。
オリンピックとは何なのだろうと、歴史を少々ひもといてみました。
古代オリンピックはギリシアの祭典
オリンピックは古代ギリシアのオリュンピア(オリンピア)の地で始まりました。
オリュンピアは最高神ゼウスの聖地で、オリンピックはゼウス神を讃える祭りとして4年に1度行われていました。
古代オリンピックは古代ギリシアの神事のひとつだったのです。
日本で言えば、奉納相撲のようなものでしょうか。
当時、ギリシアには数多くのポリス(都市国家)があり、激しい覇権争いをしていましたが、オリンピックのときだけは神の前に休戦しました。
ギリシア全土のポリスから人々がオリュンピアに集まり、競技に打ち込んだということです。
その第1回は紀元前776年ですから、今から約2800年前、日本ではなんとまだ縄文時代です。
古代ギリシア時代は長く続きましたが、その終焉とともに古代オリンピックも393年が最後の開催となりました。
1100年以上にわたり、一度も中止されることなく293回も開催されたことになります。
近代オリンピックは「平和の祭典」
近代オリンピックはフランスの教育者ピエール・ド・クーベルタン男爵が提唱し、1896年に始まりました。
第1回大会は、古代オリンピックに敬意を表してギリシャのアテネでひらかれました。
クーベルタン男爵は古代オリンピックの精神に感銘を受け、スポーツを通じて人間の心身を健全に育てていくこと、世界の人々が平和に交流していくことを願っていました。
「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」というのがクーベルタン男爵の提唱したオリンピックのあるべき姿です。
この考え方は、「オリンピズム」として今でも受け継がれ、他のスポーツ国際大会とオリンピックとの大きな違いとなっています。
競技・参加者は時代につれて
古代オリンピックの最初の競技は200m弱の徒競走だったと言われています。
祭典が大きくなるにつれて次第に種目が増えていきました。
ショーの要素を帯びた競技も人気があり、今で言うプロのアスリートのような人たちも現れたということです。
相手が倒れるまで試合が終わらないボクシングや、絞め技あり・時間制限なしの格闘技(パンクラティオン)など、かなり過激なものもあったようです。
なお、古代オリンピックの競技者は男性のみで、当初は貴族階級、のちに市民階級の人たちも参加が許されるようになりました。
競技者が全裸だったというのはビックリですが、これは神に奉納するため、そして身分による差が出ないようにするためだったと言われています。
近代オリンピックはというと、第1回大会では10競技43種目だったのが、東京2020では33競技339種目となっています。
競技はいろいろ入れ替わっていますが、陸上、水泳、体操、射撃は第1回から休むことなく行われています。
初期には「綱引き」や「芸術競技」など、今から考えるとちょっと不思議な競技もありました。
芸術競技は、精神も大切にするオリンピズムの考え方には沿っているのですが、採点が難しいことなどから競技からは外され、現在では文化プログラムとして実施されています。
近代オリンピックも、第1回目は男性のみで行われました。
1900年の第2回大会からは女性も参加できるようになりましたが、選手1066人のうち女性はたった12名だったそうです。
当時は女性のスポーツ参加が一般的でなかったとはいえ、驚きの少なさですね。
近年のオリンピックでは、競技者の多様性も意識されています。
東京2020では女性競技者の割合が48.4%と半数に近くなり、LGBTQの選手もめずらしくなくなりました。
東京2020オリンピックへの思い
新型コロナウイルスの感染拡大の中、東京2020オリンピックはかなりの無理を押して開催された感があります。
医療の逼迫や飲食業・サービス業などの苦境を目にすると、複雑な思いにならざるを得ません。
開幕直前のドタバタぶりは、残念ながらオリンピズムのゆらぎさえも感じるほどでした。
選手や関係者の方々もウイルス感染の脅威にさらされているわけですし、猛暑や台風の影響も大きく、本当に大変な大会だと思います。
それでも、アスリートの方々の健闘には胸を打たれます。
ただただ、皆様の無事を祈り、応援するばかりです。
【参考】
公益法人 日本オリンピック委員会
日本体育大学オリンピックスポーツ文化研究所
https://www.nittai.ac.jp/sports/index.html
「学問としてのオリンピック」 橋場 弦、 村田 奈々子 (編) 山川出版社