おいしい秋

秋ほど呼び名の多い季節はありません。

スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋、実りの秋など。

過ごしやすい気候で、いろんなことにチャレンジしたくなる季節ですね。

お気に入りの秋はどれですか?

さまざまな秋の中でも「食欲の秋」は、もっとも人気があるのではないでしょうか。

馬も太る秋?

秋は実りの時期を迎える作物が多いために、ついいろいろ食べたくなってしまうのかもしれません。

また、冬の寒さに備えるため、本能的に食欲が増すということもありそうです。

昔の人々にとっては、食料が乏しくなる冬の前にしっかり食べておくことは生きるうえで必要な行動だったと考えられます。

人間ばかりでなく、動物たちも秋にはよく食べて太ってきます。

たとえば「天高く馬肥ゆる秋」と聞くと、高く晴れわたった秋空の下、馬たちが丸々と健康的に育っている様子が目に浮かびますね!

ただし、この慣用句に関してはそんなのどかな話ではなかったようです。

唐の詩人・杜甫の祖父にあたる杜審言の詩に「雲浄妖星落 秋高塞馬肥」という一節があります。

これは「不吉な星が流れ、秋には北方の馬が肥えている」、つまり力を蓄えた敵(北方の匈奴)が攻めてくるから気を付けろ、という警句だそうです。

「天高く馬肥ゆる秋」は、このような故事から生まれたのでした。

現代ではそんな心配はなく、さわやかな季節を表す明るいことばになっています。

「馬も肥えるんだから、人だって」とおいしいものを食べる言い訳にしたり……しませんか?

実りの秋

栽培技術の進歩もあり、一年中さまざまな野菜や果物が手に入るようになりました。

そうは言っても、旬のものが一番おいしいのは間違いありません。

季節のものは安くて栄養価が高いのも良いですね。

秋においしい食べ物といえば、サンマや鮭などの海の幸、柿や栗などの山の幸。

そしてなんといっても新米です。

早場米は8月頃から出始めますが、新米のピークはやはり9月から10月。

秋真っ盛りです!!

透き通るような白さの、美しい粒。

繊細な新米をそーっとといで、水は普段より控えめに。

大事に炊き上げられたピカピカのごはんがふんわり湯気を上げていたら、もうそれだけで幸せな気持ちになれます。

一年中食べているごはんですが、お米も生鮮食品なのだということを、新米の時期になると思い出します。

福山の秋の味覚

福山の郷土料理「うずみごはん」「ばら寿司」にも、お米と秋の実りが使われます。

どちらも、収穫のお祝いやお祭りのごちそうとして各家庭に伝えられてきたものです。

都市化や核家族化が進み、また食生活が豊かになったことによって昔ほど作られなくなりましたが、伝統食を見直そうという動きも広がっています。

福山には海も山もありますので、食材の種類が豊富です。

10月は、特産の鯛が特においしくなってくる頃です。

農作物ではレンコンや里芋、シイタケなどが旬を迎えます。

ばら寿司には魚や野菜がふんだんに使われ、豪華なものです。

うずみごはんは、ちょっと変わった料理です。

「うずみ」とは?

うずみごはんは、ちょっと地味な見た目をしています。

ごはんを盛ったところに、おいしいいりこだしが張ってあって、シンプルなお茶漬けのよう。

しかし、実はそのごはんの下にごちそうが隠されているというユニークな料理なのです。

ぜいたくが禁じられていた江戸時代に、ごはんの下におかずを埋めて目立たないようにして食べたことに由来すると言われています。

「埋める」から「うずみ」なのですね。

江戸時代に使われた具は豆腐や里芋やシイタケなどだったそうですが、現代のうずみごはんには鯛なども入って、さらにぜいたくなごちそうになっています。

今はもちろん、堂々とごちそうを食べられる時代ですが、宝探しのような楽しさがあります。

「うずみごはん」は学校給食にも取り入れられ、福山市のご当地メニューとして進化を続けています。

何かをうずめる楽しさを生かし、ごはんに限定しない「うずみ料理」としてスイーツなども次々と誕生しています。

「うずみちゃん」というキャラクターもいて、福山市のうずみ食文化はまだまだ発展しそうです。

ふくやま観光・魅力サイト「うずみごはん」

https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/foods/95159.html

楽しくおいしい「うずみ」、ぜひ福山で食べていただきたいところですが、もうしばらくは地域間の移動は控えたほうがよいのかもしれません。

福山市のサイトにはさまざまなレシピも掲載されていますので、興味のある方は秋の食材を使ってチャレンジしてみてはいかがでしょうか。