新緑、薫風、青葉など、5月の時候のあいさつに使われる言葉はいかにもさわやかです。
2020年のゴールデンウィークは家で過ごす期間になってしまいましたが、窓を開けて風を入れたり、近所をちょっと散歩したり(マスクをお忘れなく!)、良い季節を楽しむことはできます。もし住宅街を散歩されるようでしたら、ときどき上を見てみてください。何かいませんか? 青い空をバックにゆうゆうと泳いでいるもの。そう、鯉のぼりです。
鯉のぼりはどこから来た?
鯉のぼりが広まったのは江戸時代だそうで、19世紀半ばの浮世絵にもよく登場します。
画面いっぱいに黒い鯉のぼりが描かれた歌川広重の浮世絵「水道橋駿河台」が有名ですが、他の絵師たちも、町中のあちこちに鯉のぼりがはためく風景や、母親におんぶされた男児が小さな鯉のぼりを持っている姿など、さまざまな場面を描いています。鯉のぼりは江戸の人々にとって身近で、そして心躍るものだったのでしょう。
端午の節句は、もともと中国の故事から始まり日本に伝わってきた、邪気を払う行事です。
奈良時代にはすでに宮中行事となっていたそうで、その後、武家社会になってからは端午の節句に用いられる菖蒲(しょうぶ)が尚武(武を尊ぶ)に通じることから、男児が健やかに強く成長することを願う行事となりました。武家では勇壮な鎧甲(よろいかぶと)を飾ったり、のぼりを立てたりする習慣がありましたが、江戸の町民がそれを真似てのぼりを立てるときに、縁起の良い鯉の形にしたらヒットした、ということのようです。初期の鯉のぼりは和紙で作られていました。
最近の鯉のぼり
高い竿のてっぺんに矢車など飾り、五色の吹き流しを付け、大きな鯉のぼりを泳がせるというのは、現代の住宅事情ではなかなか難しくなりましたが、それだけに見かけたときにはうれしくなりますね。子どもの健やかな成長を祈る気持ちは昔も今も変わりませんので、鯉のぼりは根強い人気があり、マンションのベランダに取り付けるタイプのものもよく売れているようです。
江戸の鯉のぼりは黒が主流で、やがて赤い緋鯉が加わり、現代ではカラフルな鯉がたくさんあります。兄弟の人数にあわせて、青やピンクやオレンジ色など、好みに合った組み合わせを作るのも楽しいですね。
広島の鯉のぼりと言えば…
広島で鯉と言えば、なんといっても広島東洋カープ!応援グッズには鯉のぼり型のものもいろいろありますね。でも、当地の「鯉のぼり」といえば、それだけではありません。
当社がある福山市のお隣、府中市では例年5月に「天領じょうげ端午の節句まつり」が開かれます。
歴史ある白壁の町並みに鯉のぼりが飾られ、武者人形や武具なども展示される人気のイベントです。2020年はコロナウイルス流行のため残念ながら中止となってしまいましたが、来年以降を楽しみに待ちたいと思います。
◯広島県府中市観光協会「天領じょうげ端午の節句まつり」
http://fuchu-kanko.jp/fkan/?page_id=963
また、「ひろしま鯉のぼり」というのもあります。
当社からはちょっと遠いですが、大竹市の伝統手漉き和紙を使い、一つ一つ手作業で作られる工芸品です。
今では伝承者はただお一人だそうですが、広島県の優れた特産品「ザ・広島ブランド」にも選ばれた見事なもので、アートなインテリアとしても楽しめそうです。一つ一つ手描きなので、お子様の名前を入れたり、好みの柄を加えたりといった注文もできるそうです。黒い鯉の上に金太郎が乗っているのが伝統の柄ですが、金太郎のかわりにカープ坊やが描かれたオリジナル品もあって、思わず頬が緩みました。こんな鯉のぼりなら、一年中飾っておきたくなりそうですね。
◯中国新聞 2020/2/12付け地域ニュース「広島ブランド新たに9品」
◯広島市「ひろしま鯉のぼり」
https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/110334.pdf
一日も早く緊急事態が終わり、お子様たちが空を泳ぐ鯉のぼりのようにのびのび過ごせる毎日が戻ってくることを願っています。