秋になると、空を飛ぶ鳥たちの顔ぶれも少しずつ変わっていきます。
春から夏にかけて日本で子育てをしていた鳥が南へ向かう一方、北の地域から日本へやってくる鳥もいます。
季節によってすむ場所を移動する「渡り鳥」です。
渡り鳥というと、広い湖や湿原を思い浮かべるかもしれません。
しかし、実際には、日本各地のさまざまな場所に鳥たちは飛来しています。
都市の水辺にも渡り鳥
渡り鳥がやってくるのは、人里離れた場所だけではありません。
東京湾に面した千葉県の谷津干潟では、秋になるとコガモやオナガガモ、ヒドリガモなどのカモ類が見られます。
また、ハマシギやトウネン、キアシシギなどのシギ・チドリ類も、渡りの途中に干潟を利用します。
愛知県の藤前干潟や兵庫県の浜甲子園なども、渡り鳥が立ち寄る場所として知られています。
環境省の渡り鳥飛来状況調査では、北海道から沖縄まで全国各地の湖沼や干潟などが調査地となっています。
水辺は、鳥たちにとって大切な食事場所であり、長い移動の途中で羽を休める場所でもあります。
都会の近くにある干潟や河口も例外ではありません。
季節によって、水辺にいる鳥の種類は変わることがあります。
普段見慣れている場所でも、秋には違った鳥に出会えるかもしれません。
空を飛んでいる鳥を特定するのは難しいですが、水辺で休んでいる場合はスマホで写真を撮って検索することもできますね。
中国地方の渡り鳥
中国地方にも渡り鳥の重要な飛来地があります。
いずれも日本海側ですが、鳥取県と島根県にまたがる中海と、島根県の宍道湖です。
中海と宍道湖の周辺では約200種の鳥が確認されており、コハクチョウをはじめとする水鳥の西日本最大級の越冬地となっています。
両地域はラムサール条約湿地にも登録されています。
秋が深まると、コハクチョウやマガン、カモ類などが飛来します。
環境省の資料では、中海では10月ごろからカモ類が増え、コハクチョウも秋に飛来。
宍道湖でも10月ごろからコハクチョウやマガンなどが見られるようになります。
瀬戸内海側にも渡り鳥はやってきます。
広島県の代表的な飛来地としては、八幡川河口があげられます。
もともと野鳥の飛来地でしたが、1971年から水鳥の保護政策がとられ、さらに埋め立て工事の際に人工干潟が作られたことで、カモ類が多く集まる場所となりました。
北から南へ移動する鳥たちにとって、中国地方の水辺も大切な場所です。
北から南へ
秋の渡り鳥を代表する鳥のひとつが、マガンです。
マガンは北の地域で繁殖し、秋になると南へ移動します。
日本では北海道や東北地方などで大きな群れが見られ、宮城県の伊豆沼などは有名な飛来地です。
伊豆沼では、秋になるとマガンが集まり、冬を過ごします。
ハクチョウ類も秋の風景を彩る鳥です。
オオハクチョウやコハクチョウは、さらに北の地域から日本へやってきます。
北海道や東北だけでなく、日本海側を南下して新潟県などにも飛来します。
新潟県の佐潟では、秋になるとマガモやコガモなどのカモ類が見られるようになり、11月ごろからはコハクチョウなども飛来します。
白いハクチョウが群れで飛ぶ姿は美しいものです。
その地域にいないと見られない風景ですが、いまはテレビや動画もありますので、居ながらにして雰囲気くらいは楽しむことができるようになりました。
南から北へ
秋の渡りは、北から日本へやってくる鳥だけではありません。
日本で繁殖を終え、南へ向かう鳥もいます。
その代表がサシバです。
タカの仲間であるサシバは、春に日本へ渡ってきて繁殖し、秋になると南西諸島などを経て、さらに南へ向かいます。
沖縄県の宮古島や伊良部島は、秋のサシバの渡りを観察できる場所として知られています。
さらに南の沖縄本島では、漫湖がシギ・チドリ類などの渡り鳥にとって重要な中継地になっています。
北からやってくる鳥と、南へ向かう鳥。日本列島は、その両方が行き交う場所なのです。
秋の空を見上げてみる
ひとくくりに「渡り鳥」といっても、移動する方向も、立ち寄る場所もさまざまです。
鳥の姿を見ただけでは、その鳥がどこから来たのか、どこへ向かうのかはわかりません。
それでも、秋の空を飛ぶ群れを見つけたとき、その向こうに遠い土地まで続く旅があると思うと、自然の不思議を感じずにはいられません。
自分が暮らす地域には、どんな渡り鳥がやってくるのでしょうか。
秋の空や水辺に目を向けてみると、これまで気づかなかった鳥の姿に出会えるかもしれません。

